まるでアトリエ!UR堅粕三丁目団地にできあがった創作系賃貸「sacca sumocca」は団地の新しい住まい方を提案するプロジェクト


いま、「団地」を舞台に、私たちの住まい方を新しく提案するさまざまな取り組みが行われていることを知っていますか?
高度経済成長期に全国で多くの団地を供給し、日本の暮らしを支えてきた「UR都市機構」さん。
最近では無印良品とコラボしたリノベーション住戸や、DIY可能で現状回復不要な住戸「UR-DIY」など、団地を現在のスタイルに合ったものへアップデートする様々な取り組みを行っています。

今回はそのアイデアの1つとして、ANABA PROJECTが共同で企画・改修を行ったUR堅粕三丁目団地の一室
「sacca sumocca(サッカスモッカ)」を紹介します。

170308_050




多様なライフスタイルにあわせた自由な間取りへ
建物更新時期の今、団地のあり方も見直されている



sacca sumoccaのコンセプトは「あなたのライフスタイルに調和する創作系賃貸」。
家を作る=”作家(sacca)”を楽しめる住戸として、カーテンなどで間取りを自由にカスタマイズすることができ、住む人がDIYで自ら作り上げることができる住まいをつくりました。

昭和30〜40年代にピークを迎えた「団地ブーム」。古くに建てられた団地の間取りは、居室が壁や押入で分断され、「ここは寝室」「ここはリビング」と、機能ごとに細かく仕切られたものが目立ちます。
一方で、今や私たちの暮らしは「SOHO※1」や「リモートワーク※2」という言葉に代表されるように、場所に対する機能の使い分けがあいまいなこともしばしば。ならば、「それぞれのライフスタイルに合わせて、自分で使い方を決められる団地を新しく提案してみよう!」と、『あなたのライフスタイルに調和する創作系賃貸』というコンセプトにたどりつきました。

改修前の様子。築40年の堅粕三丁目団地は内装こそ古い印象を受けますが、
博多駅まで徒歩8分の立地は大きな魅力の一つ
改修後の内装はこちら。仕切りをなくした開放的な一室が出来上がりました

コンセプトをもとに、改修のポイントにしたのは大きく4つ。釘やビスなどを打ち付けできる柱とフリーアレンジウォール、カーテンレール埋設の梁、そして照明位置を自由に決めることができるライトレールです。

2DKの間仕切りを大胆に壊してつくった4つのしくみは、実際に部屋を訪れた方からも好評をいただき、ニーズが十分にあることを実感しました。働き方の変化、ライフスタイルの変化にともない、団地だけではない住居そのもののあり方も、見直されていくべきなのかもしれません。

※1 Small-Office Home-Officeの略。小規模事務所や自宅で働く職場形態、もしくはその用途に対応した物件のこと
※2 会社以外の場所で遠隔で仕事を行う勤務形態のこと

棚や板材を設置することができる柱。壁には
OSBボードと呼ばれるやわらかな素材を使い、
ピンを刺して作品を飾ったり、
棚を設置したりできるようになっています
梁にレールを埋設することで、カーテンで自由に
仕切りをつくり、簡単に取り外すこともできます
照明位置を変えられるレール。
壁に飾った作品にライトを当てれば、
まるで美術館の展示のような演出も可能に


クリエイターが住んだらきっとこんな部屋になる?
アトリエ仕立ての内覧会



間取りを自由に決められる「sacca sumocca」は、自宅で仕事をする方や創作活動を楽しみたい方、家族構成の変化がある子育て世帯にぴったりです。棚や壁に好きなものを飾るなど、自由に部屋をアレンジできるというポイントは、DIYが好きな人にとってもたまりません。

内覧会に向けた部屋のスタイリングには、創作活動が好きなターゲット層の方に足を運んでもらおうと、福岡を拠点に活動するイラストレーターやファッションデザイナーなど4人のクリエイターの方に協力していただきました。

壁や棚にイラストが飾られ、トイレやクローゼットの中まで作品のあふれた住戸内はまるでアトリエ。
6日間行った内覧会には計60名のお客さまが訪れ、中にはクリエイターの作品を目的に足を運んでくださったという方も一人ではありません。たくさんのイベントがある中でお客さまに内覧会へ来ていただくためのしかけも、今後はますます重要になってきそうです。インフルエンサーとなるクリエイターを巻き込み、「作品展示会」としても見えるようにすることで、内覧会へ訪れる人への入り口が広がったように思います。
壁にはイラストを展示。このほかキッチンにも
食べ物のイラストを並べました
お風呂場やトイレもアートな空間に。細かな
ところまでしかけを行った楽しい空間です
ファッションデザイナーの方には
クローゼットでの洋服の展示と、
カーテンの仕立てを行っていただきました

お客さまは20〜30代の方が約7割を占め、「団地のイメージが変わった」という声も多くありました。ハードの変化だけではなく、あらゆる人を巻き込んで見せ方を工夫することで、場の価値は一層魅力的にアップデートされるのかもしれません。
入居者が自身のアトリエとして場を開けば、団地に住む人が定期的に訪れるコミュニティスペースの役割を果たし、まちのアナバになるなど、改修がもたらす影響は一室にとどまらない可能性を含んでいます。

現在福岡市には108のUR団地が、福岡県全体では160ものUR団地が存在します。
まちの様子や地域に住んでいる人の特徴、団地の立地条件など、それぞれの団地の強みや特徴に合う形でプロジェクト展開をしていくことで、「sacca sumocca」に終わらない、もっと多様で個性のある団地のあり方も考えていけそうです。



(編集部 天野)